「、お前家の前で何してんだよ」
「ウサちゃん」
「ここには来るなって言っただろ」
「あ、ご、ごめん…」
「って、うわっ…お前びしょ濡れじゃないか!」
「雨が急に降ってきて…」
「雨が事前に何か言って降り出すわけないだろ!ほらっ、とっととこっちに来い!」
掴んだ腕は…細い
力を入れれば折れてしまいそうなほど…
でもその瞳は、あの日の彼女とそっくりで
その心は、あの日の彼女になかった強さを秘めている
「ほら、タオル」
「あ、ありがと…」
「って、服から拭いてどーすんだよ!髪から拭かないとぽたぽたぽたぽた水が床にたれるだろ」
「は、はいっ!」
「………〜〜〜あーもういい!僕が拭いていやる!お前はそのタオルで手でも身体でもどこでも拭いてろ!」
手近のタオルを手に取り、濡れた髪をタオルで拭いてやる。
「いいか、髪っていうのはこうやって乾かすんだ」
「ウサちゃん…上手」
「まぁな」
「それに、凄い…気持ちいい」
気持ちよさそう目を細めているの姿を見て、鼓動が跳ねる。
なんだ…これ
別に驚くようなことじゃないのに…
なんだって、どきどきしてるんだ
それを考えようとしたけれど、うっとり目を細めている彼女のスカートからこぼれた水滴が、足元に水溜りを作っているのを見て再び声をあげる。
「あああああっお前!何ぼんやりしてるんだよ!」
「え?」
「ちゃんと服拭けよ!絨毯が濡れるだろ!」
「え、あああっ、ごっ、ごめんなさい!」
「もういい!今すぐ用意してやるから、お前…風呂に入っていけっ!そこからぜっっっったい動くなよ!」
「え、で、でも…」
風呂の用意をしようとした僕の方へが一歩動いた瞬間、側に置いてあったペーパーナイフを手に取り彼女に向けて投げる。
それは彼女の頬を掠り、そのまま背後の壁に音を立てて突き刺ささった。
「動くなって言っただろ」
「………は、い…」
「じゃ、すぐだから待ってろよ」
硬直したように動かなくなったのを見て、にっ…と笑うと、踵を返して風呂場へ歩き出す。
綺麗に洗われた風呂に湯をはりながら、ふと考えた。
「そういえばあいつの着替え、どーすんだ」
外はこの国には珍しく土砂降りの雨
かんそーき、とかいう便利な品はここにはない
「…ま、いっか」
風呂に放り込んでから考えればいい。
とりあえず…この雨のおかげで、あいつは暫くここに滞在せざるを得ない。
ここにいるってことは、僕のそばにいるってことで…
服が乾くまでは、僕と一緒にいるってこと…
雨のせいで、毛がべたついてイライラしてたけど…そんなことも気にならない出来事が起きた。
いつもはウザイ雨だけど、今日だけは感謝してやってもいいかな。
2009web拍手、名前変換入れて手を加えて再録。
これは確かあれですね…銀木星さんに勝手に捧げときました(笑)
高校時代の同級生なんですが、とあるイベントでもAre you Alice?のイベントでも並んでる時に会うっていうある意味運命的な出会いを繰り返しました。
…いやぁ、あれは未だに昨年一番の衝撃だね。
天然の毛は雨だとお手入れが大変だと思います。
少しでも気分転換になればいいんだけどって感じで書いてみた。
ウサちゃんも結構書きやすいんですが、甘い方向には持ってくのが難しいです(苦笑)